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邂逅

祖母が亡くなった。父方の祖父母の、最後の一人だった。

提出が差し迫っていた論文のことを気にしながらも、帰らない訳にはいかなかった。正確には、急げば死に目に会えるかもしれないと思った。急いで田舎までのバスを取り、鞄にパソコンと喪服だけを詰め込んで飛び出した。バスに乗るまでに随分走ったものだから、暫く息を切らしていた。呼吸が落ち着いてからも心臓がザワザワして落ち着かず気分が悪くなってしまったもので、空いている車内のなかで二席分を占領して横になっていた。道中、母から祖母が亡くなったと連絡が入る。ポコン、といつも通りに、えらく呆気ない訃報であった。

一人死ぬ度自分をここに繋ぎ止めている糸が切れていくようで、その人は最後の絹糸だと思っていた。しかし実際はその前と後では何も変わらず、むしろ心の支えが取れてホッとしたような心持ちになった。帰るのが嫌で嫌で仕方のなかった実家の空気が、祖母の死を契機に一変したのがわかった。

あぁ、目前に迫った明日の、なんて美しそうなこと。