依存

「彼女がね、とても我儘なんだ」そう言った彼の顔は嬉しそうで、おかしなやつだなと僕は笑った。

 

我儘っていうのは、いわゆる一般的な成人女性のそれじゃない。ブランド物が欲しいとか、高級な食事がしたいなんて彼女の口からは聞いたことがない。何が欲しいかと尋ねれば弁当箱とか、何が食べたいかと聞くと焼き鳥とか、俺が好きになったのはそういう女の子だった。でも家に帰ると途端に子どもみたいな我儘を言う。やれ髪を乾かして欲しいだの、一緒に手を繋いで寝て欲しいだのでグズったりする。そんなの三歳児じゃないかと思う。彼女の実家に二人で帰ることになったとき、家での様子をしっかり見てやろうと思ってたんだ。家ではどんな我儘な”子ども”になるんだろうと思ってさ。でも、違った。お母さんに聞いたところ、彼女はえらく手の掛からなくて聞き分けの良い子どもだったらしい。

彼女が僕の前でだけ、他のどこでもしなかったぐらい油断してるんだよ。子ども時代をやり直すみたいに他人に甘えて依存してる。こんなに嬉しい、いや、優越感は他に無いよ。