不順

忘れていいんだよ、って彼が言うの。自分では忘れたと思ってるのにね。体は記憶してるみたいだし、簡単には忘れてやらないって気概も感じるほどだよ。知ってると思うけど、私は肉体的に虐待されたことなんてもちろん無いけど精神的にはそこそこ過酷な環境だったと思う。近しい大人の機嫌を取り続けるなんて、感情の行き場所になるなんて、小さい子どもにやらせることじゃないよ。怒られないってわかっていても、例えば、私のほうが遅く帰った日に食事の準備をしてくれていたり、洗濯を率先してやってくれたり、家のことして貰うとありがとうより先にごめんが出る。そんこなこともできないなんていつかすごく責められて嫌われるんじゃないかって。そんなこと思う人じゃないってわかってるはずなのに。

記憶が時間の順番に消えてくれたらいいのにね。嫌なこととか辛い事が昔の分から残って、凝縮されていくみたい。彼のくれる絵に書いたみたいな幸せが私には怖いよ。