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悲劇

彼女が泣いていた。会ったのは一年ぶり、泣き顔を見たのは初めてのことだった。しなやかで明るく弱かった彼女は、その日激しく涙を流していた。
「大丈夫」そう言って、彼女が焼香している間預かっていた荷物を渡そうと手を伸ばしたが、彼女の手が開くことはなかった。「大丈夫か」もう一度そう聞いて、伸ばした手でそのまま背中を支える。ここにいる全員、一体なにが大丈夫だと言うのかと思いながらも。いくらか後、彼女はすみませんと口を開いた。しなやかで明るく、強い声であった。写真の中にいる友人と彼女は、僕が知っているよりもずっと親密だったのかもしれないと、根拠もなしにそう思う。
そうして僕らは一年ぶりに再会した仲間と帰路に着く。南海電車の中で見た、彼女が静かに流した涙はとても美しかった。その日まで僕は、女はもっと五月蝿く、可哀相に、泣く生き物だと思っていたんだ。